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カテゴリ:古書の面白さ( 2 )

エルサレムの道について

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書影は『エルサレムへの道』。昭和22年6月25日に京都の西村書店より出版された本です。ウィリアム・ブレイクはイギリスの詩人、画家、彫版者(銅版画職人)、預言者、神秘家などで知られている。訳者は壽岳文章で、まえがきに「ブレイクを完全に理解するには、詩人、画家、彫版者、預言者、神秘家などの諸相をつらぬく根幹が特異な宗教的霊性であった以上、その霊性がひらめいている彼の詩文に親しむことが、彼を知ろうとする人の最初の自然な試みでなくてはならなく、この本はそういう意図のもとに編まれた」と書いている。巻頭に置かれた壽岳文章の「ブレイクの生涯」は簡潔にして深い記述で、ブレイク理解への手引としては素晴らしい。
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上の写真は、この本の見返しに「河邊満甕学兄」と揮毫した壽岳文章の謹呈の毛筆が記されている。
この河邊満甕は壽岳文章より3歳年上で、後に関西学院での同僚であり、文学部教授。教育者、牧師、伝道者で自由メソヂスト教会教職として牧会にも従事していた。この本が贈られた翌年(1948年)には自由メソヂスト教会を離れ、自宅を開放し開拓伝道を開始し、単立千里山基督教会を設立している。
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この本の所有者が河邊満甕だということは、裏表紙に英語でかかれたkawabeで判る。
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壽岳文書その人は和紙研究の第一人者としてだけではなく、ブレイク、ダンテ、モリスなどの翻訳・研究者として業績を積み上げている。この『エルサレムへの道』とは直接関係はないだろうが、自由メソヂスト教会を離れて、あらたに伝道師としての道を歩き出した時期の少し前だったのが、なぜか気になる。河邊満甕の単立千里山基督教会は自由闊達な信仰によるプロテスタントの単立教会で、どの教団・教派にも所属ていないユニークな在り方は、河邊満甕の立ち位置でもあるように思える。
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by furadou | 2013-01-30 21:52 | 古書の面白さ

田邊元の『哲學通論』をめぐって

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 上の写真は哲学者・田邊元さんの岩波書店から出た「岩波全書2」の『哲學通論』を並べたものです。
 この『哲學通論』は、始めて哲学に入る人々の手引として書かれたものとあり、古今の哲学思想を叙述批判するよりも、それを媒介にして自ら思索する途を示すことに重点を置いた、とある書籍です。
 写真の右側の書籍の厚みのない方が昭和14年の4月20日に発行された8刷で、左側が厚い方が昭和16年の12月10日発行の11刷です。8刷の奥付には、「物資統制に因り従来のクロース装を紙装に改めるの余儀なきに至りました」とあります。それ以前のクロース装は見ていないのですが、本文の紙質は同じだと思います。それが、11刷になると版は同じなのですが紙質に厚みが出て再生紙だと顕著にわかります。
 昭和16年の12月8日は真珠湾攻撃の日で、この11刷の書籍は2日後に出版されました。日米間での泥沼の戦争に突入していく年月になります。奥付の発行所は岩波書店ですが、11刷では日本出版配給株式会社が配給元になっています。この年に政府は全国の取次240社余りを強制的に解散させました。そしてこれらを統合した一元的配給会社として日本出版配給株式会社が設立されました。形の上では株式会社ですが、役員も旧取次からの横すべりで一見民営のように見えますが、役員の選任や重要事項の決定には監督官庁の承認が必要とされました。実質的には政府の統制下に置かれた国策会社のようなものです。 これ以降、出版物は検閲を受け、奥付に配給元・日本出版配給株式会社の名や、出版社の住所を明記しなければ、日本出版配給株式会社は配本しないと定められました。言論統制のための機関となったわけです。
 話は少しそれましたが、紙質の変化がこんなに顕著に比較できるのは驚きでした。紙質が変わったため版は同じなのですが、印刷された本文を見比べると11刷については明瞭さに欠け、活字も少しつぶれたように感じました。同じ書籍でこんなにも違うことを発見できたことは、僕だけが知らなかったのかもしれませんが、あらためて時代の実相を垣間見れ古書の面白さを痛感しました。

 書肆風羅堂に寄ってもらって違いを実感してください。版や刷の違いも時代を映し出していることもあるのです。電子書籍にはない奥深さが古書にはありますよ。一度、田島征三の本で初版と再版の比較をしたことがありますが、著者の写真の角度が違っていたり、装幀・帯が違っていたりと、なかなかに発見がありました。
 売れてしまったらご・め・ん・な・さ・い。
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by furadou | 2013-01-26 22:49 | 古書の面白さ

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